民族的な音、そして哀愁~ドラケンスバーグ少年合唱団~2008年08月03日 14時37分39秒

ドラケンスバーグ少年合唱団

Misa Criolla / DRAKENSBERG BOYS CHOIR (ACP 617)  P1978

アルゼンチンの作曲家アリエル・ラミレス作の「ミサ・クリオージャ(南米大陸のミサと訳すらしいですが)」は、聴くほどに、気になってしまう不思議な曲です。
 さびしくは無いのですが、どこか哀愁があって、代わる代わるのソリストくんたちの個性が又、この曲にピッタリ! 合唱も不思議とピッタリ! 完璧上手の範疇から微妙に外れてしまいそうなところが(ヘタだとは思いません。決して) 暗くは無いのに、憂いがかもし出されてしまっているのです。ハイ。

 曲が良いのでしょうか? それは、あるかも。
 ソリスト君たちが良いのでしょうか? 絶対にそれは有り!です。

 なんとゆーか、ドイツ語系、イギリス語系で聴くようなソリスト君たちではないのです。キャラクターが違います。合唱団員ではなくて、歌手、なんですよね、このときのソリスト君たち。背後の合唱もそうです。表現力があります。

 南米大陸ということですが、風や空気、人を寄せ付けない切り立った山々の優しさがアフリカ大陸でそういう風景に身をおいている少年たちのハートと共鳴しているのかもしれません。

 なんだか魅力のあるミサ曲(宗教曲という感じはしない)でした。

 その裏面はこのときのソリストたちの独壇場。
 ふざけている? って尋ねたくなるような楽しい選曲と、それらの曲にあったソリスト君たちの個性が光ります。この盤で初めて聴いた曲は全てとても魅力があると思いました。

 だから、「こだま」だの「こもりうた」だの「クリスマス・キャロル」は、私には、ちょっとだけ邪魔で、盤のイメージとしての統一感に欠けたと思いました。ムロン、それらの聴きなれた曲でも、ヨーロッパの某有名少年合唱団のソリストに匹敵する、と確認したとしてもです。

 それなりにDrakiesたちのLPを聴き続けてきて、いい加減、某少年合唱団の残影を払拭しても良いのに・・・と思う今日この頃であります。

ヨーロッパを意識していた頃~ドラケンスバーグ少年合唱団2008年08月03日 20時41分33秒

ドラケンスバーグ少年合唱団 DEO GRACIAS

DEO GRACIAS(BCP 1513)

これが日本風に言って小中学生のしかも男の子だけの合唱だとすると
音域の幅や表現力等々
決してヘタではない。決して。

でもプログラムをチェックして
パレストリーナやシューベルトに混じって
モーツァルトの LAUDATE DOMINUM を見つけたら

ファンが期待したとしても
仕方ないんじゃないかな。
・・・なんで LAUDATE DOMINUM のソリストに
ソプラノ少年を起用しなかったの?
変声後の若い声も素敵には素敵、なんだけれど・・・。
この盤のNO.1ガッカリ要因はそこにあると思う。たぶん。
私の場合。

B面は、主にシンプルなピアノ伴奏か無伴奏で
美しい小品が続きます。
でも雰囲気的には
たとえば大学を卒業してキングスカレッジ合唱隊をリタイヤしたような
お兄さんたちが組んで余裕で歌ったら似合いそうな曲想。

少年合唱団としてはまあまあ歌えているとは思うけれど
Drakiesくんたちは ギリギリまで究極する歌い方ではない。
低音部等もあって立派だとは思うけれど
でも もっと 似合う歌があるはず。

・・・心優しい歌声は良いのですが。

自信、個性~ドラケンスバーグ少年合唱団2008年08月06日 20時24分24秒

ドラケンスバーグ少年合唱団 In Belgium

In Belgium (EMI BRIGADIERS BCP 1514) Rec 1979

非常に歓待され感激的なベルギーへの演奏旅行であった様子が伝わってくる。
これはブリュッセルでの録音盤だが、構成が面白い。

まずはパレストリーナのミサでソツのない聖歌隊的演奏をしてみせる。
設立の時から、ヨーロッパ(東でも南でも北でもなくて 西的)ヨーロッパを目指していた合唱団は、「歌える」ことを西欧人に示した。と思った。

が、パレストリーナのミサは、キリエ、サンクトス、アニュスディのみ。

「パレストリーナをふつー以上に歌える」ことを示したあとで、
さっさとあの南米大陸のミサ(ミサ・クリオージャ)に選曲をシフトしてしまう。
しかも、Misa Criolla / DRAKENSBERG BOYS CHOIR (ACP 617)  P1978 と同じソリストを使って。
同じなんだけれど時間が経過してしまっているからソリスト君は変声した声で歌っているのだ。
が、曲が全体的に憂いがあって、野性味もあって、でも繊細で、西欧の古都で聴くには、かなり刺激的だったことだろう。

このソリスト君、B面でもソロしているが、変声したての若い声がある曲をソロしている間、聴きながら聴衆は泣いていたそうだ。
Drakiesは感情表現が豊かだと思うが、そこに共鳴したのだろうと思う。

この盤を聴いたときに、私が感じたのは、ドラケンスバーグ少年合唱団はこのとき、西欧諸国の有名少年合唱団なみには歌えるという自負はあったんじゃないか、ということだ。
その上で、なにか、飢餓感も感じていたのではないか。

借り物ではない歌、もっとDrakiesにとって密接に感じられる歌。
よくわからないけれど、何かを求めている過程で、南米大陸のミサは、軌道修正の役目をしているような・・・・。

室内CHOIR的時代の音~ドラケンスバーグ少年合唱団2008年08月08日 22時33分18秒

DRAKENSBERG BOYS CHOIR IN CONCERT

DRAKENSBERG BOYS CHOIR IN CONCERT

この頃のドラケンスバーグ少年合唱団の柔らかくやさしい合唱でバッハのG線上のアリアを聴くのも良いのですが・・・。
この頃のソプラノ・ソリスト君(EP出しています)のブラームスも良いのですが・・・。
上品なシューベルトも良いのですが・・・。

でも、困ったことに、昨今の生き生きしたDrakiesを見ていると
「違うんじゃないかなあ」と、つい思ってしまう。
ハイドンなんか歌わなくても良いんじゃないかなあ、なんて。

事実、B面の
Where have All The Flowers Gone?
ソロやデュエットをCHOIRが包み込む演出が良かったりしたし・・・。

変声後の若々しい男声(といってもまだ15?歳以下)は相変わらず魅力的(かなり艶っぽい)だとして・・・。

この合唱のカラーからして、TVショーなんかからお呼びがかかりそうな音彩で、YesterdayやThose Were The Daysも良いのだけれど・・・こじんまりしたTVショー的CHOIR(それもヨーロッパとかアメリカ的)から、
スタジオ全体を起爆させるほどエネルギッシュなCHOIRへ
早く変貌して欲しいと、感じつつ聴きました。

大胆な構図、堂々とした内容~ドラケンスバーグ少年合唱団2008年08月08日 23時19分08秒

Drakensberg Boys Choir SOLOISTS (BCP 1526)

Drakensberg Boys Choir SOLOISTS (BCP 1526)

その名もソロイスツというこのEPが届き、カバーを見たとき、
本当に驚きました。
こんなにもカバー的にも魅力的なソロEPを録音していたなんて・・・。
売り子さんから話があって
南アのショップから取り寄せたものですが
まだ足元を見られていなかった当時のことです。

ソリストくんたちの写真があって下に名前があって
・・・なんだか某CHOIRみたい(カバー写真の印象度はこっちの方が高かったけれど)・・・ですが、ソロの感じや声の可愛らしさまで
似ています。
違うところは、メゾくん、ソプラノくんとともに若々しいバリトンくんも居るところかな。

ドラケンスバーグ少年合唱団に関して
ヨーロッパ志向はダメ、と言いつつも
この手の録音は大好きなので
このEPはお気に入りの1枚でもあります。

声を残しておきたいような
ソプラノくんが出現したときに
また
このようなソロ録音を出して欲しい。

ムロン、私の中ではリクエスト曲は決まっています。

最初の到達点、最高の演奏~ドラケンスバーグ少年合唱団2008年08月10日 12時33分51秒

DRAKENSBERG BOYS CHOIR EUROPEAN TOUR 1980

DRAKENSBERG BOYS CHOIR EUROPEAN TOUR 1980 (DBCS 2)

 レコードに針を落とした瞬間、柔らかな男声が聞こえてきて、追いかけるように同じく静かなソプラノが重なり、木管的な四声のハーモニーが、パレストリーナの世界を構築していく。エンターテイメント性(?)をサッパリとそぎ落とした演奏で、合唱団員がどこかの大聖堂の聖衣をまとって聴衆の前でミサ曲を捧げても、違和感はないだろう合唱。A面を聴き終えて、聖歌隊の学校でもなく、教会に所属しているわけでもない普通の音楽学校の生徒たちが、ドイツやイギリスの有名所の大聖堂所属の聖歌隊の如く、さりげなく(そして禁欲的に?)パレストリーナやラッソを演奏しきったことに感心してしまった。
 ソプラノ&アルトくんたちはやさしく成熟した声を聴かせているし、変声後のパートは!…
 ソプラノにもまして、すごいのは変声後のパートの、十二分に訓練され柔軟性に富んだ初々しく若々しい大人の男声の声の質そのものなのだが、例えば昔の(今は聴いていないので)キングスカレッジの如く、頭の良い(?)カッコ良い(?)大学生ふうのお兄さんたちが歌っているのかと思うと、…違うのだ。レコードの裏カバーにシェーンブルン宮殿での記念写真が掲載されて居るが、そこにいるのは、日本的に言うと、小学校高学年から中学生くらいのお子たちばかり。この子どもたちのうちの誰があの男声を響かせているの?的ミステリー…なのだ。
 B面。ブラームスも麗しい。ハーモニーにつややかなふくらみがあり、あくまでも端正で上品。途中、曲を彩る一人のソプラノくんも、私のハートを揺さぶる完全な木管系。美しい。
 B面は、1曲1曲、全ての曲が、演奏会最後の最後のアンコール曲でもあるかのように、丁寧に丁寧に大切に大切に演奏される。その集中力も立派。四声全てのパートの声に潤いがあり弾力がありやさしさがあり伸びやかさがあり、さわやかさがあり、品があり、それら全てをコントロールできる演奏力がある。
 その演奏力を印象付けた後、レコード最後に収録された曲「 8.THE LORD'S PRAYER (David Fanshawe)」で、初めて、器楽伴奏がつき、にぎにぎしくドラケンスバーグ少年合唱団っぽい、アットホームな姿(演奏)にふれてホッとする瞬間が訪れる。これもまた可愛い。
 どちらかといえばB面に収録された曲の方が、A面よりも、完成度が、更に高いような気がした。どの曲も素晴らしい出来だが、機会があったら特にも「 5.DIS JULLE WAT DIE WIND LAAT WAAI (South African Folk Song)」を聴いて欲しいような気がする。
 とにもかくにもこのレコード通りの演奏ならば、ヨーロッパで歓迎されたことは間違いないだろう。

 この録音で、ドラケンスバーグ少年合唱団は、創立時に目指した「音」に到達し、そして超えた。
アウガルテンやシェーンブルンでの記念写真。
 これも彼らが目指した音楽とその最高の実力。

 Drakiesが持つ歌の翼。
 一方の羽にはヨーロッパの伝統を尊敬し大切に思う気持ち。
 だが、私は、主翼が目覚めるときが待ち遠しい。

「勢い」~ドラケンスバーグ少年合唱団2008年08月10日 20時36分46秒

IN DIE DRAKENSBERGE (DRBC 5) ドラケンスバーグ少年合唱団

IN DIE DRAKENSBERGE (DRBC 5)

カバー写真は良いのですが・・・。

最高峰のEUROPEAN TOUR を聴いた後では
なかなかキツイものがあります。

指揮者が変わりましたね?

変声少年をソリストに起用し
涼しげな少年合唱をバックに
昔のアイドルもしくはテナー歌手のごとくの曲の数々・・・。

さぞかしソロ少年は気持ちよかったことでしょう。
が、聴くほうは・・・。
ホントのアイドルやテナー歌手が持っている何かを持っていない
団員くんが形だけ歌ってもダメなのよね。

いや~、声が出るから歌う、じゃダメなのね~ということを
学んでしまいました。

カバー写真から受ける大自然の厳しさ優しさ美しさ
そんなものを期待して聴いたのですが
正直、カバーに負けている内容です。

表現力が追いつかないので
変声少年はノッペリ間延びした歌声。
みんなそうでしたね。
プロ歌手とは違う。

ただダメダメ!だけではファンとしてはダメなんで
気が付いたことをひとつ。

ソロよりは合唱のほうが良いです。
そして
この盤の合唱もソロも
ヘタはヘタなりに
ものっすごく「勢い」がある。
これは子どもたちの気持ちを乗せている証拠かも。

そしてこの指導が後年のDrakiesに通じていくのかも。

などと
良いように解釈して聴き続けました。ハイ。
とにかく変声後のパートが今までになくひどい。

EUROPEAN TOUR の面影はゼロ!

これから新しいDrakiesが始まるのです。きっと。ハイ。

ウン! やはり、なんだかわからないけれど 「勢い」だけは、有り余るほどあります。
団員君たちのノリノリの「やる気」だけは伝わってきます。