COLUMBUS BOYCHOIR アメリカ少年合唱団以前 ~ 豊かに爽やかに2008年11月06日 20時15分56秒

THE COLUMBUS BOYCHOIR

THE COLUMBUS BOYCHOIR SINGS at SPOLETO'S FESTIVAL OF TWO WORLDS
Donald Hanson, Director

 こちらのアルバムカバー写真 なんだか建物が素敵です。

 収録プログラムを見て、これは・・・と、とっても期待してしまったけれど、期待を裏切らない内容でした。

 尖塔の鐘の音(?)で始まるクリスマス。
 合唱は完璧に上手です。始まりの音。終わりの音。一つ一つの音符にも神経が行き届いた演奏で、団員一人一人の演奏力の高さが合唱に結びついているのだと思われます。

 ・・・ただ・・・上手だけれど、ちょっとだけ「華」に欠けるかも。オーケストラの中、いきなり立ち上がってトランペット・ソロを演奏するような華やぎが足りないかなあ・・・とも思いました。

 ですが、曲名を見て連想したとおり、な~んと、プログラムの半分のB面が、名無しのソリスト君のソロなのです。信じられない。名前を記載してくれないなんて。

 このソリスト君(もしかしたら複数かも。Bachの雰囲気が微妙に違うような気がしたから)は、タップリ声量の必要なこの4曲を、メンドリになることなく、オルガンの音量にも負けず、ゆったりと歌い上げて行きます。

 COLUMBUS BOYCHOIRのすごいところは、常にソリストが存在していたということ。それも貴重な木管系のソリストが、です。音階が急激に上昇降下するとき、テクニックがイマイチかなあとも感じますが、それを言っちゃぁ お終いなんで、やわらかで優しげなボーイ・ソプラノが、女声でも難しい曲を、豊かに爽やかに歌い上げるのを堪能したのでした。

The Fort Bend Boys Choir of Texas ~ 郷愁のカタチ2008年11月06日 20時35分50秒

The Fort Bend Boys Choir of Texas

The Fort Bend Boys Choir of Texas / As Long As I Have Music

 伴奏のピアノの響きが耳に届いた時点で、小中学生を育てたお母さんや、小中学生時代が遠のきつつある方々の胸には、ぐっと迫り来るものがあると思う。

 ピアノ伴奏の響き・・・学校の体育館で聴くコンサートの時のと音の伸び按配が似ていて、その時代への郷愁で心がしめつけられる感じなのだ。

 ピアノの響きでホロっときた後で、聴こえてくる少年たちの木管系歌声のやさしさやわらかさに、メロメロ状態。
 最初の曲「1.As Long As I Have Music」でノックアウトされる。

 たとえばモンセラートも歌っているカザルスの「8.Nigra Sum」等々が入っているけれど、他の聖歌隊と比較することなかれ。
 彼らの合唱の良さは、技量云々ではなくて、彼らの合唱を聞くものが聞き手自身の内にある蒸留された思い出とリンクすることにあるのだ。

 Matthew Douglasくんもそういうタイプのソリストと言える。それは、たとえば誰かの演奏を聴くことで、自分自身や子どもの小学生時代の思い出の音へ記憶が繋がるようなことである。

THE ST.THOMAS CHOIR OF MEN AND BOYS ニューヨーク聖トーマス合唱団 ~ 現在もこの音を聴くことが出来る?2008年11月06日 20時51分52秒

ニューヨーク聖トーマス合唱団

A Cappella at St.Thomas (番号無し)
conducted by Gerre Hancock

 まずはタイトル通りに、聖トーマスにおけるアカペラの選曲をチェック! タイトルだけ見て「うむ、うむ」と頷くことなかれ。Hear my prayerはPurcellだしAve verum CorpusはByrd、Laudate DominumはTallisなのだ。そこに聖トーマスの技というか主張が垣間見えるような・・・。

 そして肝腎の演奏は、というと・・・◎。
 これってもしかして本拠地の教会での録音? 
 残響が実に実に美しい。ちとソプラノ系が私の更年期耳に痛い気もするが、聞こえてくる音が限りなく深い。そして聖トーマスというと、(正直に言うと)CDで聴いたときには、音がこもって濁っているようで、私はパスしていた。が、このLP盤からは、透明感に溢れた合唱が聞こえてくる。

 いつもの楽な言い回しをさせてもらうと、WSKコンサートの第1部をWSK+コルス・ヴィエネンシスで務めている趣がある。でもって+ちょびっと華やか(トーマスのBS効果)で哀しい(男声)。

 私はEmendemus in Meliusを聴いてバードの世界に浸ってしまった。
 ああ、現実に戻りたくない。今でもこの音を教会で聴くことが出来るならばニューヨークに行く価値はあるぞ。

 2~30年も前に某がニューヨーク聖トーマスは良い、と言っていたのを私はフンフンと聞き流していたが、彼女はもしかしてこの生声を聴いていたんだなあ・・・と納得。
 ソロは全くない(と書きたかったのに豊饒感にあふれた拡がるソプラノソロが最後の曲に数秒あった)。
 2面に至っては初めて聴く作曲者の作品ばかり。旋律がビミョウに新しいっぽいが、(2100円の音楽中辞典ではB面作曲者の名前を探せず)A面の曲想とも違和感がない雰囲気だし、どう声を出せばどう聞こえてくるかを熟知した上での演奏は、臨場感に溢れ、輝き、最高の結果を出した、と言えるかもしれない。

Phoenix Boys Choir ~ 声の微妙な濁りと、濁りの中の透明感2008年11月06日 21時01分07秒

Phoenix Boys Choir

Phoenix Boys Choir Sings Alleluia (STEREO PBC 3171)

 おそらく、これが最初に録音されたLPかも。

 音を揃えて、ソフトにきれいに音を出そうとしている。訓練はされている合唱だ。それはよいが、なにしろ音があまりにも不安定。きれいに揃えようとして、合唱に勢いがない。飼い慣らされて、イヤイヤ歌っているような・・・。だが、ソロになると、訓練された声が、かなりの魅力に変わる。一人一人は声をキレイに出す訓練を積んでいるが、まとまったときに、合唱力として結集するに至っていないということか? 

 合唱よりはソロに魅力あり。選曲を見るにこのCHOIRは半分は、ヨーロッパ大陸指向。が、勝負するには、芯がなくて散漫としているように思う。

 1面よりは2面の方が声が出ているし、曲としても伝わるものがある。あまりヨーロッパ系では聴かないせいか、アメリカ的にも感じられる。

 特に、癖が無くソフトにきれいに伸びる声の高低を単純に重ねていく「1.Alleluia,K.553」が美しく、このCHOIRの持ち味の良さを楽しめる。

 又、「 7.Sweet Little Jesus Boy Terry Smith, soloist」は、秀逸。
 高音ぽくない高音にしびれる。これだけは繰り返して聴いてしまった。

 声はBOYだが、喉の強さ、ビブラート、声の微妙な濁りと濁りの中の透明感に、アメリカのしかも黒人系の声の、とてつもない魅力を感じた。写真に黒人少年がいないので実際には白人少年が歌っているのだと思うが。しかも、指揮者と同じ名字の。声は違うけれど、M・ジャクソンか美空ひばりがゴスペルを歌っている感じ、とでも言っておこう。(・・・って、例えがイマイチですね。)