ボーイ・シンガー Heintje ハインチェ ~ 大人が求めた理想の男の子の体現2016年09月04日 15時58分54秒


ハインチェ少年の立ち位置というかコンセプトが如実に表れたタイトル。親にとっては心身ともに健康的で頼りになる息子、兄弟にとっては頼りになる兄もしくは素直で建設的な弟、と、家族にとって理想的な男の子を体現していたのではないかと思います。その意味では、この盤の選曲も、実に健康的です。危ういところや、陰りが全くありません。少年時代が持つ明るいイメージを形にして見せてくれた男の子だったのではないかと思います。
ハインチェの集大成からのベスト・チョイスでしょうか。人気のありそうな曲が選ばれています。ドリームランドが無いのは個人的には残念ですが、何枚かあるハインチェ盤の中から、ちょっと聞きたい時など、この盤が良いと思います。
戦争も終わり、人々が未来指向で希望を持って生活していた時代、ハインチェの屈託のない豊かな声量の歌声は、人々の心にかなっていたのだと思います。この盤の選曲も、時代に合致していたというか、人々が求めていたものだったのだろうと思います。この頃は、NHKみんなのうたも、外国の曲が取り上げられて日本語の歌詞で歌われていましたが、この盤にもみんなのうたで聴いたことのある懐かしい曲が入っていました。
録音によっては、レコードの方が良い場合もありますが、ハインチェのCD盤は、レコード盤よりも聴きやすいと思います。どちらかというとこの盤の選曲はLP盤よりも新しっぽいです。硬軟取り混ぜた選曲も、万人向きといえるでしょう。
売れたアーティストのお約束、クリスマス・アルバムです。ハインチェは、ここでも、他のアルバム同様に、朗々と歌っています。ここまで聴いて思いました。彼にとっての歌って何? 彼は何を思いながら歌い続けたのでしょう? どのアルバムのどの曲を聴いても、なんだか、同じに聴こえてしまうのは、私に新鮮な驚きを得るいわば感動する力が欠けているからかもしれないですね。彼の場合、表現力がどうこうではなくて、天賦のソリストだったのだと思います。