ボーイ・ソプラノMichael Bannett ~ 技術にすぐれ、その技術に見合う声を持ったソリスト2016年10月08日 08時31分19秒



 「聴く者を楽しませる」には難しい曲集であると思います。その「難しさ」とは、例えて言うならクラシックの超絶技巧とか最高音を出す技術とかではなくて、シンプルさ故の表現の難しさです。おじゃる丸のオープニングテーマ「詠人」を、聴かせる曲として歌う難しさ、とでも言いましょうか。あれって、北島三郎氏だから、あれだけ歌えていると私は思っています。  Michaelくんは技術的に相当に優れていて、変声が始まった声も選択された曲のテイストに似合っていると思います。彼の表現力に、周囲が執着した気持ちは想像できます。
 ただし歌というのは、どこかに、ポジティブな要素だけではなくて、生命の悲哀感みたいな要素もあると思うのですが、それは形だけどんなに上手に繕って悲哀っぽく歌っても、そこは大人と違って、元の生命力に満ちたMichaelくんの状態が根底にあるのが感じられて、自信にあふれた歌からは、他のあまたのボーイ・ソプラノよりも技術的に優れているが上に、上手に歌えば歌うほど、私には嘘っぽく聴こえてしまいます。こういうとき、もしかしたら私っておヘタ専、かも、とか思ってしまいますが。
 本当に上手なんです。6.It was a Lover and his Lass などは、イギリスのBSが歌っているのとは違って、編曲も凝っていて、彼自身の声を重ね、芸術的な仕上がりになっていました。 Michaelくんは、ボーイ・ソプラノとして歌うことに自信があって、周囲も、その声と何よりも彼の表現力に一目置いていたソリストなのだと思いました。