ボーイ・ソプラノ Richard Bonsall ~ 端正で上品、古典的な香り2016年11月15日 14時39分47秒



 非常に折り目正しい、クラシックな(古典的な香りのする)演奏です。どの角度からチェックしても、お行儀のよい模範的な態度と品の良さを歌い手の少年に感じます。今の時代からしたら古っぽいかもしれないですが、そこが端正で上品なのです。
 私が個人的に苦手とする揺れるヴィヴラートすら、上品です。昔の到達点ともいえる、少年らしさよりも、完成度にこだわった聴き方によっては、ときに女声てきな演奏にも聞こえます。・・・上手すぎるのです、本当に・・・。レコードで多くのRICHARDの録音が残されていますが、ここに収録されている音源は、傷ついていないのが良いです。
 ・・・彼の歌には、胸を締め付けるような、時代の古さ、切なさがあります。ウィーン少年合唱団の映画「野ばら」で、シューベルトのアヴェ・マリアが流れましたが、この盤での演奏でも、あのときの、祈りが聴こえてくるようです。これからRICHARDのレコードを何枚も集めるのにはチャンスと忍耐が必要でしょうから、手軽な音源で聴いてみるのも一つの手段です。もちろん、現在も素晴らしいボーイ・ソプラノは存在しているでしょうが、時代が歌わせていることもあるので、チャンスがあるときに、試しに目の前の音を聴くのも良いと思います。そこに、RICHARDとの素晴らしい出会いがあることでしょう。