レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊~世界を満たす黄金の光の声2008年10月30日 20時30分46秒

レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊

IV. FORSCHUNGSBEREICH Hochrenaissance(16.Jh.)
GIOVANNI PIERLUIGI DA PALESTRINA:Missa Papae Marcelli 8 Motetten(ARCHIV PRODUKTION 14182)

1961年10月6~9日録音  Dirigent Theobald Schrems

 レーゲンス・モードに入るのに相応しいとして、最初にこのレコードを選んで聴いた。合唱が始まると同時に、脳裏にパーッと草原のイメージが拡がった。青々とした草原ではなく、風景全体がどこかうすい黄金の光に染まったそよ風吹く草原である。

 レーゲンスの合唱はおだやかにやわらかくそして限りなく心やさしい。選曲はパレストリーナの「教皇マルチェルスのミサ」とモテット。曲の静かさ清らかさと相まって、各パートが一つの色彩の音(一人の団員が幾重にも人数分の録音を重ねたような音)に訓練されきったレーゲンスの合唱は、聴く者の魂を天上の光で包んでくれる。

 おそらく、神に対立する立場や神の国から遠いことを嘆くたち立場からではなく、神の波動に浴しその波動の一端を伝える立場で作曲したと思われるパレストリーナの作品を、神さまの世界の内側に属している声で歌い上げるレーゲンスのこの合唱は、シャープ感をそぎ落としているが故に、黄金の光となって世界を満たしていくのではないかと思われた。

 教皇マルチェルスのミサ曲は、真偽のほどは定かではないが、トレント宗教会議であらゆる多声音楽が教会から排除されようとしたとき(だろうなあ。宗教音楽って色っぽすぎるもん)、パレストリーナがこの曲を作曲して、ポリフォニー音楽が宗教性と両立しうることを証明して教会音楽の危機を救った作品。なそう。
 だから、ある種の教会音楽にあるような色っぽさはあまりなく、だからといって宗教くさくもなく、魂が徐々に解放されて軽くなっていく。

 ミサ曲は通常文という歌詞しか選べないが、モテットはさまざまな主題を持つ歌詞を選べる、のが違い、なそう。

 レーゲンスの合唱は、光や大気の如く、質感が無い、というか、希薄。
 宇宙空間に浮かんで、360度、あらゆる方向から聞こえてくる合唱に包まれる感じ。
 ハンス・シュレムス・レーゲンスよりはかなり現実的な音、ではあるけれど。

 幾分、少年声に傾いた、各声部の音量配分も技術も完璧で、相変わらず、すきがないほど上手なレーゲンス・ワールドが展開する。

コメント

_ ヤマチャン ― 2014年09月22日 16時18分59秒

 レーゲンスブルグの演奏を初めて聞いたのは、NHKで71年に放送された、ドキュメンタリー番組で、合唱練習の様子と、寄宿舎生活が紹介されてました。アルカデルトのアべマリアを練習する様子が主で、合唱以外にも器楽の練習や、オーケストラの練習もしていて、驚きました。 88年の初来日も行きましたが、指揮がラッツィンガーではなく、演奏も劣っていてがっかりしました。パンフレットには、直前に健康を害し、交代したと書いてありました。Libraryの説明ではその後もラッツィンガーが続いたようですね。私もhetsujiさんと同じで、シュレムス時代の演奏が好きです。特にビクトリアの「私の目は溢るる涙」が好きです。ラジオでエアチェックしたので、LPを持っているのは羨ましいです。でも、前述したテレビのアヴェマリアも素晴らしかったです。覚えておいでですか?懐かしいです。私のライブ経験は、このレーゲンスブルグが最後です。今は、取りためたカセットを聞いたり、LPやCDを聞いてます。少年合唱を熱心においかけていたのは、そのころまでだったような気がします。今のドムスパッツェンはどんなのでしょうね?いずれにしても、どの合唱団も、50年代、60年代が音楽的には全盛期だったのではという気がします。80年代の前半が、それに続くような印象があります。私のわずかな経験からの印象ですけど・・・。声変わりの時期や、時代の影響などもあるように思います。それでも、少年の声というものは、本当に美しいものですよね!

_ Hetsuji ― 2014年09月22日 21時42分06秒

ヤマチャン 様

 ご訪問と素晴らしいコメントをどうもありがとうございます。とても嬉しいです。
 今、私は整理整頓の時期に入っていて、TV放送された番組の資料を見ているところです。でも、71年のものは見ていないと思います。覚えているのは、バッハ。少年がソロしていました。カセットならあるかもしれません。
 ビデオも1980年からTV放映されたものは撮ってあるのですが、放っておいたら、幽霊になっていました。デジタルがでた時点で、録画しなおすべきでした。
 田舎住まいでコンサートには恵まれないこと、出歩くのは億劫だし、お金もないしで、レコード中心のファンです。聴いていて黄金期は50年60年代ということも納得できます。CDになってからは、興味も薄れていましたが、演奏はともかく、リアルな音で聴かせるCDも出てきたので、・・・今だったら、何処のChoirが良いのかちょっと解りませんが、上手なところで聴いてみたいです。
 生レーゲンスを聴いたのはずっと後です。ラッツィンガー以後でしたが、でも、上手でした。
 1969年録音の6.Caligaverunt oculi mei レスポンソリウム「私の目は溢れる泪で」を採録しているLPは、気長に網を張っていればオークション等で手に入ると思います。今、Choirの録音物は人気が冷え冷えなので、底値なんじゃないかと思います。お奨めはヨハネ受難曲です。sounds'Libraryではtadaさんが感想を寄せて下さっていますが、そういう感じです。
 ヤマチャン 様、又、Choirについてのコメント、お待ちしています。

_ ヤマチャン ― 2018年06月16日 15時33分29秒

 お久しぶりです。
先日ハンス・マルチン・シュナイトという指揮者の訃報が載っていて、確かレーゲンスブルグの指揮者だったのではと思い、確かめるためにここにお邪魔したら、ありましたね!こういうことを確認するにはここが一番です。
 このごろは、本をテーマにしておいでですが、膨大な資料の整理が終わったのですか?

_ Hetsuji ― 2018年07月05日 14時45分17秒

ヤマチャン 様
 ご訪問をどうもありがとうございます。コメントのチェックが遅くなり申し訳ありません。
 壁一面のレコードは・・・聴くのも挫けておりました。・・・反省・・・。
 シュナイト氏は芸大の教授もされていたのですね・・・。レーゲンスも客演だったのかなー。ご冥福をお祈りいたします・・・。
 すみません・・・。私は今、何を聴いたら良いのか、見失っていて・・・。何か、お薦めはありますか?

_ ヤマチャン ― 2018年07月06日 23時33分08秒

 シュナイト氏は、バッハやシュッツのレコードがでてますね。たぶん一時期レーゲンスにいたのではないですか?
 Hetsujiさんにおすすめなんて、できないですよ。だって私はほんの一時期少年合唱に夢中になっていただけですから。周囲に合唱ファンがいなかったので、こうしてネットでおしゃべりできるのがうれしいのです。
気が進まない時は無理しないほうがいいですよ。休む時はしっかり休んで、また元気になったら続けてください。

_ Hetsuji ― 2018年07月07日 10時34分38秒

ヤマチャン様 どうもありがとうございます。
誰からの一言が刺激になって、〇〇を聴こうとか、パーッとイメージが拡がることがありますので、何かありましたら、これからもどうぞよろしくお願いします。

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