システィーナ礼拝堂合唱団 ~ 「信仰という特別な空気」の中で2008年11月03日 15時57分09秒

システィーナ礼拝堂合唱団

CORO DELLA CAPPELLA SISTINA Der Knabenchor des Vatikan in der Sixtinischen Kapelle (ACANTA DC 21.841 STEREO) P1973
Leitung:Domenico Bartolucci

 黄金の粉を振りかけた鈴のような金属的なでもどこか丸いソプラノが変声後の声と競うような合唱で始まるのだが、残響が大きく長く、私自身が現場にいるかのように錯覚してしまう。

 ソプラノ組はpになると輝きを失ってくすんでしまうのだが、ひとたびfに戻るとキラキラと輝き始める。
 クリアで屈託のない精神を感じて非常に気持ち良い。

 作品的に完成度の高さを感じたのは3.Improperium exspectavit。
 この曲自体が美しいのかもしれないが、シャープでありながらも丸みを感じる光るソプラノが余裕のある男声部の分厚い層から自然にスーッと浮かび上がる様には、信者ではなくても厳かな気持ちにさせられてしまう。

 演奏にほころびが無いとは言わないが、コンサート系合唱団にはあまり無い「信仰という特別な空気」の中で、演奏に浸ることで魂の何処かが癒される1枚であると思う。

ウィーン少年合唱団 ~ BEST 中 BEST の音源2008年11月03日 17時54分11秒

ウィーン少年合唱団

天使の歌声(ウィーン少年合唱団のすべて) (東芝EMI株式会社 EAC-70127) 1980年11月20日発売

  「ウィーン少年合唱団のすべて」という邦題よりもむしろ原題の THE BEST OF VIENNA CHOIR BOYS が全てを表現し尽くしているアルバムである。
 幾度と無く何処かで聴いた音の中でも選りすぐりの録音が、この1枚である。

  しかも「このレコードは最新の技術によりモノラール録音をステレオ化したものです。」の断り書きの通り、この録音は今まで何度も聴いた中では、音の輪郭がはっきりとしている。

 具体的には、以前の録音では、空気のようにぼやけていた音がくっきりとして歌っている一人一人の声の個性が感じられるようになった。
 喩えるなら、コンサートのときにホールの後ろで聴く合唱ではなく、席が前列の方で合唱とともに、歌っている団員一人一人の声を聞き分けるような具合である。

  繰り返して発売される録音群ではあるが、それだけに「ベスト」として1枚になると相当に聴き応えもある。モーツァルトの子守歌も、この少年の声がやさしい。

ウィーン少年合唱団 ~ 華やいで、可愛らしく2008年11月03日 18時08分21秒


LES PETITS CHANTEURS DE VIENNE (PHILIPS Minigroove A00.606.R)

 トーンが高く華やかな中にも可愛らしいWSKの「愛のきずな」。思わず、森みたい! 
 続く「牧歌」もシャープな声にも可愛らしさが…。
 でもやはり決まり所はビシッと決まる。「セレナード」のソリスト君。抑制の効いた適度な情感。第2ソプラノ的な いそうでなかなかいない声だなあ。

 おフランス盤。しっかりと指揮者の名前が曲の前に書いてありました。んで、指揮者はおフランス盤により決定事項。
 LACOVICHのウィーン少年合唱団は、可愛い過ぎ。可愛いというよりも「可憐」な幼っぽいソプラノ。何より良いのは、特にもアルトくんたちの心も喉を全開にして歌うかの如くの潔さ。
 2.La Pastorella stances(F.Schubert)は、80年来日組の超繊細さが印象深いけれど、ここでの演奏は、叫ぶ手前のアルトくんたちが本当に男の子っぽくて、共感してしまう。気持ちよく声が出ている、ああ、いいなあ。…だけど、決して粗野ではないところが世界ナンバー1のウィーン少年合唱団ここにあり!なのだ。名実ともに誇れる演奏がここにある。

 でもって、ピアノだけの演奏で素朴っぽいところも私好み。
 そりゃ、合唱に関して言えば、透明じゃないところがあるんだけれど、歌い手の精神的なクリアさも伝わってくるもんね。

 BRENNのウィーン少年合唱団は、なんと言っても、特筆すべきは、「南国のばら」で、ご贔屓の幻のソリストくん。
 天体の音楽でも、小鳥のさえずり的なソロで突出している。
 たぶん、同じ子ですよね?

 東欧の少女のソプラノのように細くて繊細で柔軟ででも女の子と違って声に芯が残っている感じ。

 盤としては、A60.606R とN00.624Rの両方が1枚に詰まっている (COLUMBIA ML 4873) がお得なのかもしれないけれど、印象を分けて演奏を楽しめるから、私は10インチ盤の方が好き。

 オーケストラ等との競演で洗練された演奏を聴かせるグロスマン教授以前の、ここにある彼らの演奏は、声の「素」を伝えてくれるから、グロスマン以前も こだわって聴いていきたい。

 私は傷も平気なのでCDよりもレコードの音が好きですが、こと、このSphaerenklaengeのソリスト君の声。傷なしのきれいな音で聴きたいので、CDで聴いてみたいなあ。