ウィーン少年合唱団 ~ 水か風のように清らかで冷たく美しい音2008年11月01日 21時34分13秒

ウィーン少年合唱団

J.S.BACH: JOHANNES-PASSION / HARNONCOURT (6.48232 2LPs)
Leitung:Hans Gillesberger

 2面と3面、特に2面の方は男声ソリストの出番ばかりがほとんどでつい退屈してしまった。(上手なんだろうけれどタイプではないので=私は単にミーハーファン)

 ぼ~っと3面の合唱をきれいな女声だなあ・・・と聴いてしまって、あれ、これウィーン少年合唱団だったんだ、と思い直したりして。ということは、少年声は女声に引けを取らないということなんだ。また男声ソロになってぼ~っ。だけど、3面の17分頃からB-Sソロが始まるとハッと目が覚めたりして・・・やはり、ミーハー。

  このソロは5分くらい続く。ホケ~っと聞き流すと、決して子どもではなく、少年でもなく、女でもなく・・・B-Sは実に不思議だ。声が「華」に変貌しそうな予感も内包しているし。(実際には華への予感だけで終える声が99%だとしても)

  4面の2分くらいにも同じくB-Sソロがあるが、こちらはキィも更に高い。女声なら身体を揺すって体力に任せて音を出す感じを受けるのだが、B-Sは淡々と歌っている。特に高い音のところで切なく途切れるかなと思ったが、スッと歌いきった。

  B-Sと男声を聴いて思う。大人の声は(女声もだが)生々しいのが聴いていて疲れる。

  この頃、というよりもしかしたらギルレスベルガー教授が作る合唱は、生々しくないのだ。そして人間の体温の生々しい温かさを感じさせない合唱なのだ。
 水か風のように清らかで冷たく美しい。他の合唱団にはないこの合唱、聴く者が感じる、たぶん人肌ではない合唱の温度から、ウィーン少年合唱団の合唱は「天から降り注ぐ声」と形容されるようになったんだろうと、ふと思った。

 20年ほど前、仲良くしていたかなり年下の(と言っても、ファン歴は私よりも長く密度の濃い聴き方をしていた筋金入りの)CHOIRファンから「下手だけれどあげる」とレーゲンスのヨハネをもらったことがある。

 どちらかというと彼女はたぶんクロイツやトーマス教会等といったドイツの聖歌隊が好きらしくて決してウィーン少年合唱団信望者ではなかったと思うのだが、当時、レーゲンスよりはウィーン少のヨハネ、テルツよりもウィーン少のドイツミサに軍配をあげていた。
 ウィーン少年合唱団の演奏が、こうして聴きなおしてみても、作品として「整った」合唱だったことによるのではないか、と今、思ったりする。

 「バイエルンの天使」ではヨハネのことを「(B-S)ソロの多い曲」と表現している場面があるが、この盤では、数的にはソロはそれほど目立つほど多くは感じない。

 聴きどころは、1面の合唱。1面のソロと短いデュエット。3面のソロ。4面のソロ。になる。

 数少ないB-Sソロは、だが、時間的には割と長く、一団員としか名前を記されないが故にその分だけ団の看板を背負ったソリストたち(少なくともソプラノとアルト、各1人はいそう)の名演をたっぷりと心ゆくまで聴くことが出来るのが嬉しい。

 教授が志向した音とアーノンクール氏の相性がピッタリ合って、繊細なヨハネ受難曲を完成させたような気がする。

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